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男子は五○・五%が〈仕事優先〉と考えているのにたいし、女子は二七・六%にすぎず、〈自分の生活優先〉が四七%となっている。
女子は仕事や職場で疎外感を抱いて、四二・六%が〈他によい勤め先があればやめたい〉と考え、また・一五・二%が〈近いうちにやめたい〉と答えている。 いやなら大いにやめなさいというのが、F銀行のコンピューター勘定である。
女子行員一人分の給与で、系列子会社のFキャリアビューローの派遣労働者を三人か四人は使えるからだ。 人間の値踏みもコンピューター勘定なのだ。
私たちも、このコンピューター勘定と無縁ではない。 大多数の客は貧しい一般の国民だが、預貸の往復で大企業にたいするより利子で五倍の大損を強いられているだけではない。

行員たちの残業手当のピンハネ同様に、効率化で機械操作や従来の銀行事務まで押し付けられ、ピンハネされていることになる。 これも、収益ナンバー・ワンのF銀行の利益の何割かを占めているはずである。
私は、F銀行を取材しながら、コンピューターの巨大な装置を備えた、奇妙で冷酷な現代の怪物「マネーファイター」が誕生しようとしているようでならなかった。 なにごともマネー、マネーのコンピューター勘定でしぼりあげる、情報化時代版「金色夜叉」の出現である。
「不安」を売るカネ集め戦争第三章T海上このビルを取り巻く列に加わるまでには、何段階かの受験戦争をくぐり抜け、また就職戦線に勝ち残ったエリートだけが、T海上の企業戦士となる特訓を受ける。 そして、たたかう企業戦士となって、いま企業戦争と金融戦争に狩り出されている。
金融戦争でものをいうのは、やはりマネーである。 マネーの厚みのある企業が、有利な作戦で有利な戦闘を展開できる。
したがって、金融戦争はいきおいカネ集め戦争新聞で紹介される。 となる。
連合軍総司令官のもと陸海空軍を編成T海上火災は、日本最大の企業集団、Mグループのなかの優良企業。 自らも「世界のエクセレント・カンパニー〔最優秀企業〕」をめざしている。
株式市場では、T自動車、M電器など一指定銘柄のなかに入っている。 二三社の損害保険会社のなかでは、むろん断然トップ。

大学生たちの就職人気でも、毎年のようにトップとなっている。 東京・丸の内のT海上ビルは、皇居とJR東京駅のあいだの超一等地にそびえている。
地上二五階、塔屋二階、地下四階、軒高九九・七メートルのビルは、レンガ色のタイルでおおわれ、就職人気トップの重要な要素となっている。 毎年、就職シーズンとなると、T海上におしかけた大学生の列が、テレビや新聞で報道されている。
神奈川県下では、本物の第二次大戦を真似たカネ集め戦争に、T海上の戦士たちが狩り出された。 その戦闘ぶりは、知られざるT海上の今日の姿を象徴していた。
ND2作戦と名付けられたこの第二次大戦は、八七年一○月に開戦となったが、敵軍に宣戦布告したわけではなく、密かにはじまった「宣戦布告なき戦争」だった。 しい「決起大会」だったが、ともかくも平和がつづいているミナト横浜でのことであり、これではあまりにも色気がない。
本物の第二次大戦中の日本軍部でさえ、前線の兵士の戦意を維持するため、前線直営部隊などが編成された。 同支店傘下の各支社は、航空部隊、陸軍師団、海軍艦隊、特殊部隊連隊として編成され、代理店なども連合軍に組織された。
開戦直後の一○月一二日には、連合軍本部の横浜支店に陸海空三軍と特殊部隊などの兵士を集め、「史上最大のND2作戦決起大会」が開かれた。 S総司令官は、「首都圏決戦では、まず横浜が勝利するこ禅とだ」などと徹をとばした。
このとき配布された、総司令官の作戦指令書「日勤社八八年度首位逆転ND2作戦について」は、この銃第一次大戦の戦略や目標を記し、「史上最大の作戦とは」という文書は、この大戦の「歴史的意義」を解詞説している。 また、「ND2作戦スケジュール」表には、大戦の作戦予定などが細かに記入されている。
杯連合軍総司令官は、さらに代理店などに案内を送り、二月九日には、横浜市内のホテルコンチネンタール横浜で、代理店連合会などの「史上最大のND2作戦決起大会」を開催。 ここでは、作戦の立案者とさ海れる入野参謀本部長が作戦について説明。
つづいて本社からかけつけた加島義一専務が、「皇国の興廃こ癖の一戦にあり」といわんばかりに、金融戦争の国際・国内情勢を説明。 代理店連合会長らの「決意表明」燕近くに「慰安」婦まで送り込んだ。
この「決起大会」では、アトラクションが用意され、若い女子社員らがミニスカート姿のチアガールとして登場。 これを見たある老兵はいった。

「すけべえじじいの前で帽びを売らされている娘さんの姿を見たら、親御さんはどう思うだろうねえ。 そういう印象だったよ」エリート・サラリーマンたちが演じた戦争とはとても信じられない、異常事態が演出されていた。
すでにあげた作戦指令書などの文書、入手した証拠書類、関係者の証言などをもとに、神奈川県下での第二次大戦の様相を明らかにしていこう。 この第二次大戦がND2作戦と名付けられたのは、その戦争目的からきている。
指令書は、まずく横浜支店必達目標である対日動社首位逆転について〉述べている。 憎悪すべき敵軍は日動社、つまり同業の日動火災だった。
日動火災は、一般の企業の売上高に当たる収入保険料で、同県下のトップを占めていた。 この日動火災を略称でND社とし、作戦はND社を二年以内に追い越しノック(N)ダウン(,)するという、二重の意味を持っていた。
ND社をNDするのはNDの二乗であるいうわけで、ND2作戦と名付けられた。 また、第二次大戦では、ヨーロッパ戦線は一旦、〈ナチス(N)ドイツ(D)の手中に収められるに至った〉などと〈史上最大の作戦〉の歴史的意義を位置付け、連合軍であるT海上が、ナチス・ドイツである日動火災の侵略からヨーロッパを解放するというストーリーになっている。
日動火災を憎むべきナチス・ドイツに見立て、T海上は正義の連合軍になりすました。 作戦指令書は、〈必達目標〉を二段階にわけ、第一段階の〈八八年九月に日動社に追いつき〉、第二段階の〈八九年三月末に勝利を完全に手中のものとする〉とし、この〈必達目標〉を遂行するための〈コンテ〈連合軍総司令官にアイゼンハワー就任。
五○万両の車両、一五○万トンの武器・弾薬、そして四○○万人の兵員により英仏海峡を渡り、ヨーロッパを解放し、ドイツを撃破する文字通りの「史上最大の作第一段階の作戦スケジュールは、まず八七年一○?一二月の〈ND2作戦スタートコンテスト〉からはじまり、八八年二?三月に〈ND2史上最大の作戦胴1〉を計画。 つぎのように歴史的位冠付けをしていS支店長が連合軍総司令官アイゼンハワーになりすまし、「決起集会」などを通じて、支店と傘下の支社、代理店などに〈「史上最大の作戦」実行を決意〉させるところまでである。

つづいて八八年四?六月を〈ND2ノルマンディー上陸作戦コンテスト〉と命名。 これは、〈連合軍の空挺部隊がフランス上空より降下、そして連合軍の尖兵がノルマンディー海岸を埋めつくした〉というわけだ。


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